治療を受けようと海外へ渡航する人
医療ツーリズムから転送)
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医療観光

医療ツーリズム(いりょうツーリズム)とは、安価な費用で治療を受けたり、治療と併せて休暇を楽しもうと他国へ行く旅行を分類してあります。

旅行もそうですが、医療行為はその大小に関わらず、ある程度のリスクが伴います。海外に治療を受けに行く前に、「少なくとも」自国の医師に相談したり、ウェブでこれまでに医療ツーリズムに出かけた経験者のコメントを探すなど手を尽くしましょう。(できれば自分と共通する治療を受けた人も含めて)。

一般論として医療ツーリズムには、治療を求める人は平均所得が高い国の出身で、低めの国を訪れる場合が含まれます。多くの場合、医療費ははるかに低く済むとされていますが、逆のことも起こり得ます。発展途上国を出発し、より近代的な病院と訓練された医療従事者がいると期待した国へ向かう人もいるかもしれません。

国民皆医療制度を導入するカナダイギリスなどの居住者は、自国では面倒な手続きを求められるし待ち時間が長いからと、海外へ渡航することがあります。保険の適用外の医療行為を受けようと出かける人もいます。保険制度の多くは美容整形や性別適合手術の経費を払わないし、カナダだと保険対象の医療に歯科治療も含まれません。また海外で不妊治療を希望するカップルも増えています。

医薬品および医療制度の規制が厳しい国に暮らす人は、自国では未承認でも規制が異なる国では承認された治療法を求める場合があります。対象には特殊な治療法が含まれ、科学的裏付けが限定的またはまったくないこともあります。医療ツーリズムの例としてはリスクが非常に高い場合も、治療の他の選択肢が適合しなかったが最後の手となる場合もあります。

良質の医療サービスが低コストで受けられるかどうかも、退職後の海外移住英語版)の場所を選ぶ重要ポイントかもしれません。


ジェネリック医薬品

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治療を海外で求める理由が他にあるとすると、一部の医薬品の費用が安い、または入手しやすい点です。

顕著な一例を挙げるなら、アメリカ人はカナダに出かけてインスリンを入手しており、価格は自国のおよそ10 分の1です。複雑な問題が発生する場合もあり、カナダの医師から処方箋をもらうのは早くも安くもない可能性、カナダの薬局でアメリカ合衆国の処方箋を書いてもらうには追加の証明書類が必要かどうか。処方箋があっても長期分の投薬に使えないかもしれない点、そして 6 回分の処方箋を受け取っても1ヶ月未満の量しかないし、保存期間も心配です。アドバイス源は、おそらく医師が最良です。

原則として一般的な薬、例えば WHOが制定した必須医薬品一覧に載った薬品のほとんどは、一方で開発途上国(所得が低い国)ではかなり安く手に入ります。他方で歯科のインプラント術や新薬、または珍しい医薬品などは輸入品なので、しばしば自分の国よりも高価になります。処方規則も違うかもしれません。たとえば中国では処方箋がなくても、バイアグラ(または中国製の模倣薬)やさまざまな抗生物質を店頭で入手できます。

フィリピンでは、バイアグラとシアリス(Cialis)はしばしば観光地の行商人が売っています。その同じ業者が見るからに偽物とわかる商品を持っていて、ロレックスだ、レイバンだというラベルが付けてあったら、いくら安くても麻薬を買うのはかなり危険かもしれないです(1錠約1ドルの投げ売り(英語版)でも)。ここでは注意点として、これら薬物は循環器系に影響が出て、男性の一部は非常に危険な場合があります。もし手に入れようと考えているなら、必ず医師に相談してください。

価格差があまりにも莫大な一例は、C型肝炎治療用の商品名「ハーボニー」(レディパスビル/ソフォスブビル)です。以前の注射による治療法では病気が治癒する可能性は約 60% しかなかったのに、多くの場合、非常に厄介な副作用がありました。ハーボニーは新世代の薬の初代(2011年頃)に含まれ、経口摂取で副作用が少なく、患者の 90% 以上を治癒しました。アメリカ合衆国で特許を取得しており、残念なことに販売価格は1錠約1000ドル、通常の治療は1日1錠で12週間、経費は8万ドル超にのぼります。現在、市場には同様の特性を持つ他の薬が少なくとも 2 つ出ており、価格は安いと言いながら数万ドル代です。イギリス国民健康保険、カナダの一部の州の公的保険、アメリカ合衆国は多くの保険会社がありますが、これらの治療費は深刻な病状を例外として、支払いの対象外であり、治療を受けない一部の患者は、病気を他の人に広めるかもしれません。

インドは、イギリスの大学が実施した研究の重要な部分を検証する重要な論文が揃わないという理由で、ハーボニに特許の付与を認めませんでした。インドでは12週間の全治療コースの費用は約1000ドルかかります。これは「海賊版」販売者の疑わしい模倣薬ではありません。関与するインド企業は大規模で評判が高く、開発元からライセンスを取得しています。インドで12週間かかる治療休暇の経費には航空運賃や良いホテル、ハーボニーの治療費が含まれ、アメリカ合衆国やヨーロッパなど他の国でなら、治療費だけの費用と同じかもしれません。低価格のハーボニはエジプトおよびバングラデシュにもあります。

他の面では、コストよりも可用性が問題になるかもしれません。新しい治療法や実験的な療法は、場合によって価値を証明して規制当局の承認を得るまで何年もかかり、あるいは一部の国では他の国よりもずっと早く承認される場合もあります。たとえばデング熱ワクチン(英語版)はメキシコブラジルフィリピンで承認済みで、キューバには「CimaVax」という肺がんワクチン法があり、これはアメリカ合衆国のほかラテンアメリカのいくつかの国でのみ利用可能です(2017年半ば時点)。試験を実施している他の国もありますが、すぐに承認される可能性は低いです。このような治療法は安全性と有効性の科学的証拠がいくつかあっても、世界的な承認に必要な十分な分析はまだ済んでいないため、危険だと考えるべきです。繰り返しになりますが、かかりつけ医または自国内の適切な専門家に相談してください。

規制が甘くて法の執行が不十分であったり、公務員に安直に賄賂を贈ったりする国では、偽の治療法が提供される可能性に注意してください。がん治療薬と称する「アミグダリン」または「レートリル」は顕著な例であり(アメリカ政府機関の警告[1])、効果がないばかりか危険であるにもかかわらず、せっせと販売されています。売り手の一部はアメリカ合衆国で起訴され、そのうち少なくとも1人はメキシコに診療所を開設しています。一般原則は、「奇跡の治療法」だと言われ、優れている点をあまりにも強調された場合、実際はほぼ確実に真実ではないのです。もっと踏み込んだ判断は、かかりつけ医に確認してください。

行き先

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世界各地で人気の行き先には以下が含まれます。

  • アルゼンチンロシアから来る出産ツーリズムの旅客は、以前は利便性を優先してアメリカフロリダ州マイアミ英語版)を選んでいましたが、ブエノスアイレス英語版)を来訪するようになりました。ロシア連邦がウクライナに対して侵攻英語版)して以来、西側諸国では、ロシアの航空便(と旅客)が降り立ったとたんに 受け入れ難い人物 の扱いを受けない行き先としてアルゼンチンは希少だからです。ビザの要件は、カナダアメリカあるいはその他の人気の目的地と比べるとややゆるいです。医療は良質で、アルゼンチン生まれの子どもがいると、両親がアルゼンチンへ移民を希望する時に手続きが少し楽になります。
  • コスタリカ英語版):国際的な医療機能評価 JCI(Joint Commission International[2])の承認を受けた私立病院があり、最先端の手術用具やインフラを備え、アメリカ合衆国やカナダに近いこと、医療関係者は英語ができるし医療関係者は医師も歯科医師も美容外科医も研鑽を積んでおり、経費は一般にアメリカ合衆国の70%程度です。
  • ギリシャ英語版):ギリシャは質の高い美容整形の目的地として、めきめきと人気が上がっており、施術を受けに来るイギリス人が増えています。ギリシャはEU加盟国で、健康関連企業はそこそこの標準を保ち、(EUの)安全規制に照らしてチェックが行き届いています。首都アテネの私立病院部門はギリシャ国内最高峰と評判で、美容外科の病院勤務医は世界でも指折りです。もちろんギリシャは昔から人気の旅先であり、ツーリズムもサービス業界もよく発達しています。一般市民に英会話の知識が普及しており、これも有利です。
  • インド:特に心臓手術、ヒップアップ、歯科治療、美容整形、高度な外科手術が評判です。英語が公用語な点も有利。
  • シンガポール:評判が高い病院も質の高い設備もあり、近隣のマレーシアやタイよりも医療費は高額です。
  • タイ:低賃金が医療費を引き下げます。タイの病院には、性別適合手術の実績が多いところがあります。
  • 香港:質の高い設備があり、質の良い医師がいて、英語の普及率は高いです。
  • メキシコ:歯科治療のコスパは最高。アメリカ合衆国と国境を接している各州から、多少不便でも歯科治療や歯科健診を受けに来ます。個人の診療所でも病院でも、アリゾナ州、カリフォルニア州と接するロス・アルゴドネス英語版)なら医療の質はアメリカ合衆国とほぼ同じで、歯科治療ツーリズムが盛んなため、「大臼歯(奥歯)の街」というニックネームが付きました。医薬品の処方箋、メガネの調整、美容整形、大掛かりな外科手術の経費はいずれもメキシコの方が、アメリカ合衆国(だけでなく他の国)よりもかなり低いです。アメリカ人に対応する薬局はティファナ英語版)近辺などテキサス州の国境都市でいくつも見かけます。アメリカ合衆国よりも請求金額が90%引きという店も多いです。中でもフランチャイズ展開する「ファルマシアス・シミラレス」Farmacias Similares は医療部外品が安価です。アメリカ合衆国でなら処方箋がないと入手が難しい薬の一部は、メキシコでは店頭で購入できます。
  • トルコイスタンブル英語版)はアメリカ合衆国およびヨーロッパの基準に照らスト、体外受精、検眼や心臓病、植毛などの美容処置が安価です。
  • 韓国:美容整形界で世界のリーダーとして評判。
  • アメリカ合衆国:医学研究の分野では世界最高峰であり、支払い能力があるなら、医療の最先端の手法と設備が揃います。ただしその反面、最高の問診(consultation)も医療費も世界で最も高額です。またアメリカ合衆国憲法の改訂第14条に保障され、 アメリカ合衆国生まれなら(どちらかの親が外交関連の公務員でない限り)自動的に国籍がもらえるという事実があり、人気の出産ツーリズムの目的地でもあります。中国国籍の人は、アメリカ合衆国本土英語版)よりもビザ要件がゆるめのサイパン英語版)、北マリアナ諸島英語版)が人気の目的地です。
  • イギリス:お金に余裕があれば、あいかわらずロンドンのハーレー街路なら高額な費用を払って専門医の診察を受けることができます。
  • カナダ:標準は高いのに医療費がかなり安めなカナダは、医療観光の目的地として国境近くに暮らすアメリカ人に評判が高いです。カナダ国民でなければ同国の国民皆保険制度は適用されませんが、カナダで買う医薬品の値段は、たとえ無保険でもアメリカ合衆国の価格と比べると10分の一です(テンプレート:Frac1)。

– 最近になって追加された行き先には、ブラジルブルネイコロンビアキューバマレーシアフィリピン南アフリカカタールアラブ首長国連邦があります。

考慮が必要な重要事項

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旅行日数には術後などフォローアップのケアを受ける期間を計算に入れ(回復期)、十分な余裕をもたせてください。医療処置そのものの日数に加えて、数日または数週間かかる場合があるからです。医療ツーリズムの経費は、現実的に把握しましょう。治療費自体は確かに安いとしても、実際の費用を合算してみると、自国で支払う金額と差があまりないかもしれません。航空券や宿泊先のほか、慣れない街で手配するタクシーやレストランなどの代金をすべて加算するからです。

次の要点は、医療ツーリズムの計画にホームドクター、(かかりつけ医)にも加わってもらうことです。遠い国で大がかりな手術を受けるかどうか軽々しく決断すべきではありません。考えるべきこと - この処置について医師にあらかじめ、質問しておくべきことは? この手順は通常、どのように行われますか? また旅先でも同じ手順を受ける予定ですか? 目的地の国の医師や病院は、どんな規格の認証を受けていますか? また目的の医療提供者はどのような専門資格を取得していますか? 手術後の再診は必要か、判断の必要もあります。フォローアップケアはどんなレベルか、再診は数日後か、数週間や数年経ってから必要なケアがあって再診するのか。そして、このフォローアップケアは誰から受けるのか?

専門的な処置に医学上の合併症が伴う可能性があるなら、遠方の専門医から再び診療を受ける時の経費も予算内に加えておく必要があります。

母国を離れる患者や、開発途上の地域に旅する患者は、あらゆる医療ツーリズムを享受できるわけではありません。一例として母国では片頭痛の手術を受けられないから、アメリカ合衆国ならではの手術を受けようと中東やアフリカから患者が集中します。国内から、あるいは外国から第三国への旅を検討しているなら、あらゆる選択肢を検討してください。情報源を増やして支援を求め、適切な医師と国を探し当ててください。

医療保険の問題。国内でなら医療的処置を全額、支払ってくれる医療保険でも、海外で同じ治療を受ける場合に補償を拒否される(または一部しか補償しない)場合がありますから、驚かないでください。アメリカ合衆国のように同国内でさえ、一部の州の健康保険制度は州内で支払う金額のみ払い戻されて、結局、旅行者は自己負担するのです。保険会社が渡航費や交通費の補償を拒む可能性は高いです。国境越え(英語版)は処方薬を携帯する必要があり、手続きが複雑になる場合もあります。ある国で医師が有効に発行した処方箋なのに、別の国では使えない場合が考えられます。

精神疾患(英語版)や伝染病、または患者がカジュアルドラッグ中毒の治療を求めて国外へ旅する場合、出入国管理当局とトラブルに遭遇するかもしれません。アメリカ合衆国国境警備隊に「私はロブ・フォードだ、カナダトロント英語版)市長だがクラック(コカイン)中毒の治療を受けたい。シカゴ英語版)の医師を受診しに来た」などと言うのは間違いです。ただし、入国せずにそのまま帰国し、地元で治療を受けるなら別ですが。その時期、グレイブンハースト(カナダ)の街はなかなか過ごしやすい気候では?

自分の母国語と、訪問先の国で何語が使われているか考慮してください。シンガポールマレーシアインドフィリピン南アフリカなど一部の国の場合、教育を受けた人のほとんどは英語を話し、言葉の問題という重要な考慮事項を回避できるかもしれません。ただし言語が共通なだけであって、患者も医療者も英語が母語でない場合(自分は英語が「流暢」だと言っても実際には違うかも)、またはどちらかに強いなまりがある、それとも一般には耳慣れない専門用語を使う場合、微妙なニュアンスが伝わったかどうか、確かめたほうがよいかもしれません。

最後に計画を確認したら、もう一度、確認し直してください。海外滞在中、家族にはどう連絡しますか? 目的地の国に入国する際、特別なビザや、治療費の支払い能力の証明書を求められますか?

安全を確保する

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露天で行う医療行為は安いかもしれないが衛生面で劣る(入れ歯の露店)。

かつては一部の信用できない医師や偽医師がアメリカ合衆国の国境外に足場を築き、疑わしい、または危険な治療法を宣伝したり完全な詐欺を企てました(癌の治療法、体の希望の部分を長くするなど)。現代の医療ツーリズムはこうした詐欺師とは程遠いものの、それでも警戒は怠れません。少なくとも母国の信頼できる医師の診察を受けること、海外の治療計画にを話し合うことを心がけてください。

海外の医療では評判が頼りです。著名な医師がいて質の高い病院やクリニックを探してください。

何か問題が発生した場合、母国の医師に頼んでも外国人開業医の仕事を「修正」してもらいたいのに消極的だったとしても驚かないでください。問題は医療責任です。別の外科医が失敗した手術を修復しようとしたら事態がさらに悪化する場合もあるから、母国の医師は訴訟を懸念するのです。

最悪のシナリオが発生した場合、医療過誤の申し立てや訴訟を起こそうとしても海外で受けた医療行為であるため、法的手段は大幅に減少し、存在しないことが多いことも認識してください。一部の医師が診療活動の現場に海外を選択して低コストの治療を提供する理由には、一方で軽々しく訴訟を起こされない点、巨額の損害保険料から解放される点も理由の一部で、他方、この種の法的環境に備え、評判の良い医師を探すことはますます重要になります。

旅行者は回復期に障がいが出るかもしれません。障がいのある旅行者英語版)を参照してください。

脚注

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  1. About Cancer > Cancer Treatment > Complementary & Alternative Medicine (CAM) > CAM for Patients: Laetrile/Amygdalin (PDQ®)–Patient Version : National Cancer Institute, the アメリカ国立衛生研究所 アメリカ国立がん研究所. 最終更新日:2022-06-02、更新終了。2023-07-06閲覧。CAM=補完代替医療(Complementary and alternative medicine)。
  2. 公式サイト 2023-07-06閲覧。

関連項目

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